鉄(lll)のサリチル酸錯イオンのポーラログラフィー

1963 
従来,シュウ酸,酒石酸などのポリカルボン酸溶液中での鉄(lll)のポーラログラフ的研究は古くから行なわれているが,モノヵルボン酸イオンについてはあまり研究されていない。著者は種々のカルボン酸,オキシカルボン酸の鉄(lll)錯イオンのポーラ繋グラフ的挙動について一連の研究を行なったが,サリチル酸錯イオンの実験結果について報告する。サリチル酸溶液中においても,酸性側ではカルボキシル基のみが鉄に配位した錯イオンが生成し,Fe(lll)→Fe(ll)の還元において拡散律速の可逆波を与える。ただしこの錯イオンはρH4.5においても加水分解し,錯イオン中に水酸イオンが存在する。ρH5以上ではこの水酸イオンはρHの増大にともなって順次サリチル酸の水酸基によって置換され,ρH8.7以上では完全にサリチル酸の水酸基とカルボキシル基とが配位した錯イオンのみとなる。また強アルカリ性ではサリチル酸のフェノール性水酸基からプロトンがとれ,鉄との結合がイオン性となるため,酒石酸,クエン酸錯イオンとは異なり電極反応は可逆である。なおこの錯イオンの生成定数は1032.5である。鉄(ll)錯イオン還元波は酸性領域でのみ明瞭に観察されたが,限界電流は拡散律速であるが,電極反応は非可逆である。また電極反応の可逆性その他の検討に交流ポーラログラフ波も併用した。
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