インクルーシヴな学校の扉を開くシステム構築に関する考察 : 「特別支援教育」モデル事業への取り組みを通して考える

2005 
2000年度より国内15地域をかわぎりに始まった「LD等に対する指導体制の充実に関する調査研究モデル事業」は、翌2001年度には全都道府県へと拡大し、さらに2003年度からは、各都道府県において全小・中学校および盲・聾・養護学校のうちその10%以上にあたる学校の存在する地域を「特別支援教育推進体制モデル地域」として指定し、地域内にある全ての小・中学校および盲・聾・養護学校を対象に特別支援教育の推進に関わるモデル事業を実施し今日に至っている。その間、2003年3月には、「今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)」が調査研究協力者会議の名で発表されるとともに、2004年1月には「小・中学校におけるLD(学習障害)、ADHD(注意欠陥/多動性障害)、高機能自閉症の児童生徒への教育支援体制の整備のためのガイドライン(試案)」が文部科学省より出されるなど、特別支援教育の完全実施に向けた動きが急展開している。 兵庫県(政令指定都市の神戸市は除く)においては、モデル事業が全都道府県に拡大された2001年度より、阪神間にある伊丹市立緑丘小学校1校がモデル事業調査研究協力校に指定され取り組んできた。この学校では、『発達的な障害の有無に関わらず、配慮や支援の多少が違うだけで、どの子も皆配慮や支援を必要としている。』という観点から、どの子も教育の場の基本を最も制約の少ない環境である通常学級に置きながら、教育サービスの提供という形で支援体制を構築していく取り組みを推進してきた。したがって、あくまで通常学級の担任教師の配慮や支援をベースにしながらも、さらに特別な配慮や支援を必要としている児童に対しては、最前線で努力している学級担任を補佐すべく、「支援教員(AT:アシスタントティーチヤー)の配置および教科別・単元別少人数編成」や「課題別学習支援(宿題支援)」「放課後学習支援」「学習室個別指導」「障害児学級個別指導」などの支援を逐次用意し、本人や保護者の同意を確実に得ながら、全教職員・保護者・地域人材が一体となって提供していく方法を実施してきた。 また、2003年度からは、伊丹市立伊丹養護学校もそのセンター的役割の使命を踏まえて、一部の教員が要請のあった小・中学校等に出向いて行き、学級のATとして児童生徒へ直接的な指導にあたったり、教職員へのコンサルテーションなどに努め始めている。 本論文は、『人は皆、発達的な障害の有無に関わらず、誰もが配慮や支援を必要としている』という理念や思想、言い換えれば、どの子も皆今持っている力を認められ、必要に応じて様々なリソースを活用しながら支援サービスが捉供されるとするインクルーシヴな学校を具体的なものにしていくためのシステム構築について、兵庫県伊丹市における特別支援教育等に関わるモデル事業への取り組みを通して考察しようとしたものである。
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