The fragility of life: Kazuo Ishiguro's worldview in Never let me go

2010 
Shinya MORIKAWA Abstract 本稿は、カズオ・イシグロのNever Let Me Go (2005) にみられる作者の世界観を論じた ものである。その世界観とは、生は泡沫のごとく脆い、という認識である。イシグロは、 従来、大人のつく嘘に守られた子供の世界を泡に喩えていた。事実、前作のWhen We Were Orphans (2000)では、少年時代に形成された妄想が成人期に崩壊する様が描かれており、 それが作品の中心テーマになっている。一方、Never Let Me Goでは、この子供時代の脆 さが、クローンの生全体、ひいては人間の生そのものを表象するものとしてテーマ化さ れている。本稿の目的は、この生の脆弱さが、最新の長編小説に反映された、作者の世 界観の核となる概念であることを説明することにある。具体的には、まず本作の創作経 緯をたどり、次にクローンの幼少期の泡の形成と破壊の過程を通観し、さらにその過程 を読者に追体験させることが作者の意図であることを指摘し、そうした過程を経たクロ ーンと読者が直面する生と死の制御不能性を示す比喩を確認したうえで、最後に、生の 脆弱さという認識こそが作者の世界観の根底をなすものであると述べる。
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