[Immunohistochemical studies on S-100 beta positive structures in the human hippocampus in regard to age and morphological change of dementia].

1992 
ヒト剖検例男性47例 (71~103歳), 女性90例 (56~104歳) の海馬領域におけるS-100βの組織内局在を免疫組織化学的に検討し, アストログリア数, その突起の延長, 肥大度, アルツハイマー神経原線維変化, 老人斑, S-100β陽性の紡錘状線維束状構造の発現様相などと, 年齢, これらの検索項目相互間の関連について検討した.S-100βが特異的にみられるアストログリアには一般に減数とこれを代償する突起の延長, 肥大度の上昇が逐齢的に認められ, 病変の多い女性例では, 80歳代で増数も若干認められるが, 95歳以上では減数, 突起の延長肥大が顕著となる. 神経細胞にはS-100βは陰性であるが, アルツハイマー神経原線維変化, 老人斑の像と, 一部は重なり, 大部分は関連して, S-100β陽性の構造が見られた. S-100β陽性の紡錘状線維状構造の発現は, 平均して逐齢的に増加傾向を示し, アルツハイマー神経原線維変化, 老人斑発現とも関連した様相を示すが, 個々の症例において必ずしも一致した様相を示さなかった. アミロイドにはS-100βは陰性であり, 老人斑, アルツハイマー神経原線維変化を構成する特徴的な物質とされて現在問題になっているアミロイド関連蛋白質とは異なる意義を持つものと考えた. 老人斑形成にも関連しているアストログリアとの関連に注目し, シナプスの変化に伴う病変, あるいは生理的な加齢に伴う神経細胞の消失などに対応するグリアの行動と, より密接に関連しているものであろうと考えた. 痴呆などの病変のない老ラットで, 加齢に伴ってS-100βが増加しているという事実 (生化学的検討) もあり, 今後この蛋白質の加齢に伴う動向に多くの興味ある問題が含まれていることが示唆された.
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