Problems of malignant tumor complications in leprosy. I. An increase in the incidence of malignant tumor complication.

1982 
1955年よ91979年までの約25年間に多磨全生園で解剖した360例のうち悪性腫瘍の合併を見たのは111例,30.8%であった。これを各年毎に,および全期間を5年毎に区分し,I期よりV期までの各期の頻度を見るとその増加の推移は明らかである.(表2,表3)。ことにV期(1975年より1979年)では43.1%(1978年と1979年にはそれぞれ50.0%)と極めて高い頻度を示している。全国らい療養所の最近8年間の死亡例より解剖例を含めない臨床診断のみによる悪性腫瘍の合併例においても増加傾向は見られるが,その頻度は日本人の悪性腫瘍の死亡率にほぼ近く,剖検例との間にかなりの相違を示している。後期(IV期およびV期,1971年より1979年)においてらい腫型の悪性腫瘍合併の占める割合は類結核型に比して極めて高く,統計的にも有意である.(X2=8.09,P<0.01)。性別ではらい腫型の男が女よりも有意に高く,年齢では60歳代(ことに後半)が極めて高く,結局らい腫型男60:歳後半の合併例が問題となる。悪性腫瘍の種類としては消化器系の癌が多く,中でも胃癌がもっとも多く,悪性腫瘍総数に占める割合は27.9%で減少傾向は見られなかった。次いで肝癌(11.7%),食道癌(9.9%)であり,他の腸癌,膵癌,胆嚢癌などを含めると61.3%の過半数を占める。消化器系以外では近年増加しているのは肺癌(10.8%)であり,悪性リンパ腫,皮膚癌も注目される。肉腫の合併は少なく僅かに2例(1.8%)であった。らい,ことにらい腫型男に目立って悪性腫瘍が増加して来た理由として,内因として老化に伴なう免疫機能の低下,外因として環境の悪化すなわち公害問題,あるいは有害食品添加物の癌原性,変異原性としての影響などが考慮されるが,さらには諸種の薬剤の長期連用ということも考慮すべきことであろう。抗らい剤であるDDSが人に対し癌原性物質となるか否かはまだ不明であるが,動物実験ではすでに癌原性である可能性が報告されており,今後検討されるべき課題である。
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